大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和50年(行ク)86号 決定

申立人 金燦圭

被申立人 法務大臣

訴訟代理人 小沢義彦 豊島徳二 荒木文明 ほか四名

主文

本件申立てを却下する。

理由

一  本件申立ての要旨

民事訴訟法第三一二条第三号後段の規定に基づき相手方の所持する「申立人の出入国管理令第四九条第一項の規定に基づく異議申出の審査に関する稟議書及びそれに付属する文書一切」の提出命令を求める。

なお、同号後段の文書には、当該行政処分がされるまでの所定の手続の過程において作成された文書であつて、右処分をするための前提資料となつた文書をも包含すると解すべきであるから、本件申立てに係る文書が内部文書であるとしてもこれに該当する。また、右付属文書は、稟議書に付属した文書一切という以上には特定できない。

二  相手方の意見の要旨

本件申立てに係る文書は、相手方が自己使用のため作成した行政庁の内部文書であるから、民事訴訟法第三一二条第三号後段に規定する文書に当たらない。よつて、本件申立ては不適法である。

三  当裁判所の判断

民事訴訟法第三一二条第三号後段の挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成された文書には、所持者が単独で自己使用の必要上作成したものを含まないと解すべきところ、本件申立てに係る文書のうち、申立人の出入国管理令第四九条第一項の規定に基づく異議申出の審査に関する稟議書は、相手方が同条第三項の裁決をするに当たりその判断の適正を期する等もつぱら行政事務執行の便宜上自己使用のためにのみ作成した内部文書であるから、民事訴訟法第三一二条第三号後段の文書には該当しないというべきである。

申立人は、当該行政処分がされるまでの所定の手続の過程において作成された文書であつて、右処分をするための前提資料となつた文書をも包含するものと解すべきであるから、内部文書といえども同号後段の文書に該当すると主張するけれども、右の見解は同号後段を拡張解釈するものであつて、採用することができない。

次に、本件申立てに係る文書のうち稟議書以外の文書については、申立人の申立てによつても、稟議書に付属する文書一切という以上には特定されていないから、それら文書中に、民事訴訟法第三一二条第三号後段に該当する文書が含まれているか否か一切不明である。

よつて、本件申立てを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 三好達 時岡泰 山崎敏充)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例